下肢の装具について

　「装具」は、骨格筋系を四肢・体幹の外部から支えることにより機能障害を軽減したり、変形の予防・矯正をしたりするものです。ここでは、脳卒中片麻痺などに日常よく使われる下肢装具の一部を取り上げてみたいと思います。

• 短下肢装具

  A.プラスチック短下肢装具(靴べら式)　写真1

  　軽く、外見が比較的よい、装具の上から靴がはきやすい、等の利点がある。

  B.金属製短下肢装具(両側支柱)　写真2

　強度が高く、変形の矯正や可動域のコントロールがしやすい、等の利点がある。

　いずれにしても、下肢、特に足関節の麻痺に対して処方される装具です。麻痺の程度などによってこれらを使い分けます。また、麻痺が重度で膝関節のコントロールも悪い場合はこれに次の膝装具のように膝を固定する部分を取り付けた「長下肢装具」を用います。(とはいえ、実際は家庭でこれらの装具を受け入れて使っていただくのはなかなか大変です。装着の煩わしさや使いこなしが難しいため、多少歩き方がきれいでなくても、装具なしで歩く方を選ぶかたは多いです。実際、長く歩行する機会が多くなるほど装具の良さがわかってくるのですが、歩行の機会が少ない高齢者や移動手段の発達などで歩く距離が少なくてすむかたはあまりその良さを感じられず、使用しなくなってしまうようです)

• 膝装具　写真3・4

  　膝の筋力低下や麻痺、拘縮、不安定、靭帯損傷等に用いられます。問題点として歩行中に装具がずり下がってくることが多いです。そういう意味では個人的には膝装具はとても難しい装具だと思います。膝の関節の部分の継ぎ手を工夫することで、いろいろな状態の膝に使うことが出来ます。ただこちらも、基本的には膝を固定して歩くことが多いので、歩き方がきれいでなく、また外観上も問題が大きいので、患者さんの受け入れが難しい面はあります。
  　また、写真4の装具は膝の靭帯損傷などのスポーツ障害に用いられる装具です。このACL装具はちょっと古い型ですが、このように色もカラフルで、これをつけて運動を行い、スポーツに早期復帰させるというわけです。障害を受けた部位によって様々な形があり、近年いろいろな種類のものが開発されています。

  　今回は装具の中でも下肢装具の一部についてのみですが取り上げてみました。装具は障害を受けた機能を補完するものではありますが、万能ではありません。使う患者さんの意欲や使いこなせるかどうかの能力も関係してきますし、実際使っていていろいろ変化してくることも多いです。それでも、装具のおかげで歩行が楽になったり活動性が向上したかたが多いのも事実です。「適切な状態、適切な時期に適切な装具を用いること」が大切だと思っています。

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